酵素と発酵学の歴史について

酵素とは生体内の化学反応を触媒する物質ですが、どのような歴史で発見されたのでしょうか。これは、「酵」の文字と大きな関係があります。「酵」のつく熟語として酵素以外に何を思い浮かべますか。酵母、とか、発酵、などでしょう。まさにそのとおりで、酵母や発酵と大きな関係があるのです。

なお、誤解される前に言っておきますと、だからと言って漢字文化圏でこれらの研究が主に進められてきたわけではありません。主に進められてきたのは19世紀のヨーロッパです。あくまで訳語としてこの漢字が当てられただけですが、英語で酵素はenzymeと呼ばれ、これは「イースト(酵母)の中」というのが語源になっていますから、酵母や発酵が元になって研究が進められてきたということは、実は英単語の中にも残っているのです。

酵母などにより発酵が起きるわけですが、この酵母から抽出した「生命体ではないただの何らかの物質」が、酵母と同じように発酵を起こすことが分かり、発酵の本質は生命体ではなさそうだ、発酵に生命は必須ではないのかも、ということになって研究が進められたのです。

発酵が、生命ではないただの物質によって起こるのか、それとも目に見えないような生命体である細菌によって起こされているのかの区別はなかなか困難でしたが、最終的には非生命によっても起こることが分かり、酵素と名づけられたわけです。

発酵と酵素の関係

酵素の触媒作用発酵とは酵母などの微生物が有機物を分解して別の物質を生成する働きのことです。発酵そのものは微生物によって行われるのですが、分解などの作用をサポートするのが酵素の役割です。

酵素のこういう働きは触媒と呼ばれ、体の中で行われる様々な作業のスピードを大幅にアップさせてくれます。

左の図は酵素の触媒作用を簡単に説明したものです。ここでは、物質Aが物質Bと物質Cに分解される反応を酵素が促進しています。